小説『コスメの王様』レビュー|誠実な人生を静かに描いた物語
どうも、名ブタです。
「静かな小説」というものがあります。 読んでいても泣けるわけでもなく、驚くような展開もない。 それでも、なんとなく心に残って、ページを閉じたあと、しばらく余韻が続く。
今回読んだ(正確にはオーディオブックで聴いた)『コスメの王様』も、そんな一冊でした。
静けさの中にある誠実さ
高殿円さんの『コスメの王様』は、明治から昭和にかけての神戸を舞台に、 化粧品会社を立ち上げた一人の青年・永山利一の人生を描いた作品です。
物語には、大きな事件や劇的な展開はありません。 だけど、不思議と耳が離れなかった。
静かな語り口で、ひとつの生き方が淡々と積み重なっていく。 それが、逆に“生きている物語”に感じられる瞬間がある。
その背景には、モデルとなった実在の人物の存在があります。 とはいえ、これは単なる伝記ではありません。 フィクションとして語られることで、その人生に宿る“意味”のようなものが浮かび上がってきます。
オーディオブックという形式で聴いたこと
今回この作品は、耳で聴いて楽しみました。
驚いたのは、「聴いていること」が、作品のトーンと自然に重なっていたことです。
📌 情報量は多くない。けれど、感情が過剰でもない。
📌 何かを教えてくるわけでもない。だけど、静かに残るものがある。
本を読んだあとの「心が洗われる感じ」とはまた違う。
これは、“生活に溶け込む物語”だと思いました。
小説としての位置づけ
いわゆるビジネス小説でもなく、純文学とも少し違う。
現実に根ざしながらも、どこか詩のような構造で、
「物語ってこういう形でもいいんだな」と思わせてくれる一作でした。
ド派手な感動も、大きなドラマもない。 でも、そういう静けさの中にしか宿らない“意味”がある。
それをちゃんと描いてくれた作品でした。
名ブタでした。